英語だけではない!異文化コミュニケーションを妨げる要因

グローバル経済、グローバル企業、多様性、多文化社会等々、世界というものをイメージさせ、日本人以外の人達との交流やビジネスを想起させる言葉が日常であふれています。

ここでは国籍が異なる人々との交流やビジネス上のやり取りにおいて、適切なコミュニケーションと相互理解を妨げる要因について考察します。

文化の違い

国が違えば言葉も違う、だから世界共通語といってもよい英語を学ぶことは必須、というのはよく耳にします。そしてそれは間違いないと私も思います。「あ・うん」で通じるような世界はありませんし、相手に挨拶をするのも、相手を説得するのも、相手と意思決定をするのもすべて言葉を通して行われる以上、英語はもはや必須です。

しかし「英語だけやっていればいい」というのでありません
私の周りでも英語はネイティブなりに上手な日本人がたくさんいます。私なんかと違って「L」と「R」の発音も完璧ですし、なんだか振る舞いも堂々としているように見えます。

それほど英語が達者なのに、なぜか相手とうまく関係が作れなかったり、現地の同僚との揉め事が絶えなかったりする日本人がたくさんいます。

英語力・語学力は、自転車に例えれば「前輪」です。
そして後輪が「異文化理解」です。
両方なければ自転車は前に進みません。

後輪をはずした自転車をこぐと、何とか前に進みますが道に大きなキズが残ります。これと同じで、異文化理解と英語力・語学力が合わさって初めて仕事をコントロールできるようになるのです。

少し前の話になりますが、英語が非常に上手で、しかもアラビア語も話せる日本人にヨルダンの同僚を紹介したときのことです。その日本人は挨拶もそこそこに、自分のやっている仕事や課題、今後の仕事の方向性などをとうとうと話し続けました。

一方、ヨルダン人の同僚は一応聞いているのは聞いているのですが、表情がみるみるうちに白けていきました。その会合が初対面だったこともあり、お互いをよく知ることが話の目的なので、その日本人は自分の仕事のことを話続けたんだと思います。

関係構築を行っていく上で、日本人は一般的に相手の素性に加え、相手の職歴や実績、仕事がどの程度できるのかという点も重視して相手と接していくことが多いです。だからご自身も一生懸命仕事の話をし、自分がどれだけしっかり仕事できるのかを話し続けたんだと思います。

しかし、ヨルダンを含む中東やラテンアメリカ諸国では、関係構築を試みる上で重要なのは相手が仕事ができるかどうかといより、むしろ相手の「素」の部分でどれだけ相手に共感できるか、楽しいと思えるか、いい人だと思えるかです。そんな人たちに向かって、どれだけ流暢な英語で仕事の話を続けても全く意味がありません。

その会議のあと、ヨルダン人の同僚が吐き捨てるように言ったのが、「結局、あの人がどういう人なのかサッパリわからなかった。仕事の話ばかりしてCrazyだね」。以後、このヨルダン人の同僚からその日本人について話題に上がることは一切ありません。

上の例では、その日本人は以下のような話をするべきでした。
・相手の出身地
・相手の家族構成
・子供がいるなら何年生か、子供達がどんなことに興味をもっているか
・自分の家族構成や土日の過ごし方
・ヨルダンがどれだけ素晴らしい国と考えるか
・ヨルダンで困ること(荒い車の運転、時間通りに物事が進まないこと等々)

国が違えば文化が違います。

そして文化が違えば人との接し方も、考え方も、そして「常識」も異なります。

相手の「常識」を踏まえた上でお互いが接していかなければ、どれだけ語学力があっても相手と関係構築すらできないばかりか、一緒に仕事を進めていくことはできません

ステレオタイプ

血液型が「A型の人は几帳面」「B型は変わった人」。。。これらは居酒屋で盛り上がるネタのひとつかもしれませんが、すべてステレオタイプです。

「日本人はシャイ」「アメリカ人は思っていることをそのまま話す」「中国人は自己主張が強い」などなど、ある国の人々の特徴が一言で表されているのを聞いたことがあるのではないでしょうか。これらもすべてステレオタイプです。

ステレオタイプはどうやって生まれるのでしょうか。

外国人のステレオタイプは外国人と仕事をしている場合はもちろんですが、その国にまつわる書籍や映画、テレビのニュースなどで伝えられた内容、その国に行ったことのある人の話などを通して「○○人って、こんな感じの人達」と単純化されて生まれるものです。

皆さんの周りでもシャイでない日本人、会議でガンガン発言する日本人はたくさんいると思いますし、静かに話をする中国人もたくさんいるように、ステレオタイプはその国の一部の人達の、一部の状況での言動を表したものに過ぎません。

ステレオタイプの問題は、ステレオタイプに基づいて人と接することで摩擦が生じることです。

例えば「アメリカ人は本音、直球勝負。だからこちらもアメリカ人に思うことをそのまま直球で話せばいいんだろう」という人は、おそらく当たってそのまま砕けるでしょう。

エリン・メイヤー著『異文化理解力』にもあるように、普段は直接的な言い方をするアメリカ人も、相手に悪いニュースを伝えたり、あえて相手を批判しなければならないときは間接的な言い方をする傾向があります。私自身も経験がありますが、相手が傷つかないような言い方をしているなと感じることが多くあります。

そんなアメリカ人に向かって、本音勝負が肝心だからと「あんた仕事遅いね」とか、「あんたの息子さん、いつもうるさいね」なんて言ってしまうと相手は気分を害するだけでしょう。

また普段はステレオタイプ通りでも、文脈が変わればそのステレオタイプが当てはまらないことも多くあります

例えば、日本人は一般的に人に対して礼儀正しく接しようとします。そして外国人が日本人に対して抱いているイメージは「礼儀正しい」というのが多いようです。

しかしそうしたステレオタイプに反して部下に対して尊大な物言いする人が多くいますし、自分や自分の会社より格下と見る相手、取引先に対して長時間クレームをつけたり、偉そうな態度で接する人もあなたの周りにたくさんいるのではないでしょうか。

異文化理解の研究や学習では「日本人はこんな感じ」「アメリカ人はあんな感じ」という話が多いのは事実です。

ただし、気を付けなければならないことは「日本人、アメリカ人にはそういう傾向がある」というだけで、全ての日本人、全てのアメリカ人に当てはまらないですし、文脈によっても態度は変化するということです

ステレオタイプについて、以下の私の経験も是非ご参考にされてください!

ステレオタイプと偏見に満ちた私

自民族中心主義(自文化中心主義)

漢字だらけで固い表現ですが、自民族中心主義とは「自分の国や民族が他よりも優れている」という認識をもつことです。

言い換えると、自分の文化や生活スタイル、仕事の仕方、価値観が絶対的に正しいと考え、他の文化に対して優越感をもったり、異なる価値観を間違ったものと判断したり評価しない態度のことです。

簡単な例では、最近私が中東で経験したもので日本食について現地の人に絡まれたことがあります。いわく、

「日本食は味がない、美味しくない」
「グリーン・ティー(日本茶)はほとんどお湯の味しかしない」

いやいや、日本食は素材の味を大事にするんだ!と反論しても効き目がありません。

「アラブ料理はたくさんのスパイスを使う」
「たくさんスパイスを使うから味に深みがある」んだそうで、私が愛してやまない日本食をダシにアラブ料理の素晴らしさ、日本食のダメさを強調されました。

しかし日本人も自民族中心主義的な態度を取っていることもたくさんあるように思います。

途上国の人間が時間通りに仕事に来ない、仕事中にスマホをいじっていたり、終業時間になったらサッサと帰ってしまう彼等を見て「だからコイツらダメなんだ」という愚痴をこれまでたくさん聞いたことがあります。

日本人は朝から晩まで仕事、家族を多少犠牲にしても仕事の役割を果たす。「だから経済成長できたんだ」、「だから他の途上国なんかよりもスゴイんだ」と。

異文化環境における自民族中心主義の問題は、そうした「優越感」から「周囲の人を信用できない、何もできるわけがない」という態度に繋がってしまうことです。現地の人に仕事を任せなかったり、意思決定の際に現地の人の意見を聞かなかったり、日本人だけで全てを決定してしまったりする場面をよく目にします。

自分の国や文化を称賛し、誇りを持つことは人間として当然のことだと思います。しかし、それが嵩じるあまり他の国や文化に対して優越感を持つことには何の意味もありません。

異文化環境や外国人と仕事をする上で、相手の文化や考え方、生活スタイルを尊重するのは最も基本的な姿勢です。上で挙げたように、日本食のことを見下したような見方をする人と仕事したいと思いわないですよね。相手が日本人のように振る舞わないからといって、それを卑下したり見下したような口や態度を取らないよう気をつけたいものです。

(出典)
特定非営利活動法人 映像産業振興機構(2018)クールジャパンの再生産のための外国人意識調査
エリン・メイヤー(2015)異文化理解力, 英治出版
Keles, Y. (2012). What intercultural communication barriers do exchange students of Erasmus Program during thier stay in Turkey?
Neeley, T. (2018, January). How to build trust with colleagues you rarely see


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