海外のパートナーと仕事するとき、いわゆる『報連相(報告・連絡・相談)』の前提が違うことで必要な情報が思うように入らないことがあります。
画像は日本でのコミュニケーションの流れです。あくまで一般的な話で、あなたの会社と異なることもあるかもしれませんが、そこはご容赦ください。

日本では以下のような「暗黙の了解」があります。
・報連相は階段を「下からひとつ」ずつ昇る →「下」の人は「ひとつ上」の人に報連相する
・「ひとつ上」の人を飛ばすと怒られます
・他の部署や他の組織とのやり取りがある場合、「上の人同士の合意」がまず必要
・「下」の担当者だけで勝手に進めると怒られます
この背景にあるのは「組織の秩序を守る」「上に従う」という考え方です。
個々のメンバーがバラバラに動くのではなく、「上」が中心となって「下」を監督しつつ、組織の目指す方向に全体で進むことを重視するのです。
だから上司は部下の動きを把握していて当たり前。
そうでなければ「管理能力がない」と見なされることもあります。
僕が小学生のとき、おもちゃ屋さんで小学生にしては高価なプラモデルを買おうとレジに行ったとき、店員のおばさんに聞かれたことを思い出します:
「お母さんはいいって言ってるの?」
日本人は
「先生の言うことを聞く」
「大人の言うことに従う」
ことを小さい頃から言われて身に染みついています。
「上に従わなければならない」という社会前提を子どもの頃から感覚として身につけている。
だから日本の報連相の仕組みが馴染みやすいのでしょう。
この感覚は社会人として働くうちにさらに「当たり前」になります。
何も言わなくてもスタッフは何かあったら僕に相談してくれますし、こちらにも逐一情報を共有してくれます。

ところが海外の方と仕事をすると、その前提があっさり崩れることがあります。
気づいたら現地のスタッフが僕を飛ばして「上」から情報をもらって仕事を進めている
パートナーが直接取引先のトップに相談し、僕の知らないあいだに話がまとまっている。
そんなことがあると、つい言いたくなるのです「勝手なことをするな!」と。
なんで僕にまず相談してくれなかったんだ
なんで僕にまず教えてくれなかったんだ
問題が起きたら日本の本社に「監督不行き届き」で怒られるのは僕なのに。
でも後になってわかったこと。
彼らは僕を軽視しているわけではないし、僕に情報を隠そうとしているわけでもありません。
彼らが重視しているのは「スピード」「自律性」。
必要なら情報や権限を持つ人に直接自分で会いに行って話をする。
自分で考えて行動せず、逐一上司にお伺いを立てることはむしろ「未熟者」と考える人も結構います。
「上下」よりも「対等」を重んじる文化では、日本的な報連相は
「行き過ぎた干渉行為」
「マイクロマネジメント」
と受け取られ、やる気をなくしてしまうこともあります。
日本型がまったくダメなわけでも、それ以外の型が普遍的に優れているわけでもありません。どちらも一長一短です。
ただ「組織や個人の健全さをどう測るか」の前提が違うだけ。
秩序、上下の尊重を健全とするのか
スピード、自律性を健全とするのか
異文化マネジメントとは、そのような「前提の違いがないか」を確認することから始まるのです。
おもちゃ屋さんでの話のつづき。
僕は祖父と親戚からもらったお年玉を、お年玉袋のまんま手に握りしめていたのですが
「お母さんはいいって言ってるの?」
との店員さんの問いに「ううん、お母さんには言ってない」なんて正直に返してしまい。
そしたら店員さんに
「じゃあ、お父さん、お母さんと相談してからまたいらっしゃい」
と言われただけで売ってもらえず。昔はそんな店員さんも結構いましたよね。
そして家に帰り、またも生真面目に母に相談したところ「アホか」で却下。
おもちゃ屋さんでガラスのケースに飾られ、いつもあこがれの眼差しで眺めているだけだったガンダムのプラモデル。
結局買えずじまいで、我慢という言葉とともに涙を呑んだのでした。
