海外とのオンライン会議(1)会話のテンポの意味するところ

オンライン会議・・私はいまだに苦手意識が消えません。

なんでなんでしょう、話したいことは話せているのに、何かが欠けているような。

また、

オンライン会議が終わった後になって、「あっ、そういえば!」と思いついたことがあっても既に会議は終わってしまっています。

結局効率がいいのか、悪いのか、よくわからないのが私のオンライン会議に対する印象です。

さて、

私のいるヨルダンのプロジェクトも、オンラインで日本とつないで進捗を報告したり、課題を協議することがすっかり定着しました。

この投稿から3回に分け、

海外の人とのオンライン会議

について私なりに感じている難しさを整理してみたいと思います。

事例は全てヨルダン vs. 日本になりますが、海外の人とオンライン会議をする上でどんなことが問題になりそうか、ご参考になればうれしいです。

今回は「会話のテンポ」をテーマに考えてみます。

 

日本人とヨルダン人とのオンライン会議の実態

ぶっちゃけ、ヨルダン人がほとんど場を支配しています。後で録音したものを聞いていると、7割か8割はヨルダン側の発言になっています。

日本人が何か話している間、気づいたことがあればヨルダン側はお構いなしにどんどん質問したりコメントをはさみます。

また、相手が話し終わるか終わらないかの絶妙なタイミングでヨルダン人は話を始めます

これはヨルダン人の一種の「特技」です。ヨルダン人同士の会話を聞いていると、常に誰かが発言しており、それがずっと流れていくようなイメージです。

Aさん|Bさん|Cさん|Bさん|Dさん|Cさん

というように、発言と発言の間の隙間がほとんどありません

ヨルダンに限らず、外国人との会議でこの「間髪入れないコミュニケーション」に戸惑われた方も多いのではないでしょうか。

日本人は私も含め、誰かの話と誰かの話の間に「間(ま)」がないと、一体どこで会話に入ればいいかわかりません。

一方、

日本側のコミュニケーションは、相手が話し終わってから数秒、一呼吸くらいの間(ま)を空けて発言します。

Aさん・・Bさん・・Cさん・・

というように、相手の会話が終了したあとに数秒の、一呼吸の「間(ま)」があるのです。

ほんの短い「あっ」というほどの「間(ま)」なのですが、この「間(ま)」こそが日本人にとって結構重要な意味があるというように思います。

日本人の「間(ま)」の意味すること

日本人は一般的に、

相手の話が終わるか終わらないかの絶妙なタイミングで間髪いれず発言するとか、相手の話がおわるや否や、すぐに話し始めることは稀です。

なぜなら、

そのように息継ぎもなく発言するのは相手への敬意を欠く行為と捉えられるからです。

間髪いれずに話すことは「私が、私が」としゃしゃり出ているようで不遜な行為と言われます。

また、

「あいつはしっかり考えて話をしていない」
「相手の話をちゃんと聞いていない」

などと評されることにもなります。

自分が話している間に誰かが割って入るのは最悪で、そんなことをする人は「じゃま者」でしかありません。

日本人のコミュニケーションの特徴として、聞き手が話し手に「ちゃんと聞いていますよ」というメッセージを伝えることがとても重要です。

「ちゃんと聞いていますよ」という合図として、相槌を打つのも日本ではとても大事ですが、会話と会話の間に「間(ま)」を挟むことも同じぐらい大事です。

 

ヨルダン人にとっての「間(ま)」とは?

Fons Trompenaarsという異文化コミュニケーションの専門家によると、会話のテンポ、会話の流れを地域で比較すると、日本を含むアジアでは「間」を置くことが一般的だそうです。

一方、中南米やアラブでは間髪入れずに会話を続ける傾向があります。中南米などでは相手が話し終わらないうちに話し始めることが普通のようです。

ヨルダン人は実際、相手と「ポン・ポン・ポン」とリズムよく会話が進んでいくことを重視しています。

間(ま)があるというのは、その流れが止まってしまうことになり、結果、「面白くない相手と面白くない話をしている」「会話が死んでいる」という印象を持つのです。

ヨルダン人は間髪入れず「出しゃばる」ことで、

「あなたの話にとても興味があるんです!」
「あなたの話、思うことがたくさんあります!」
「あなたの話、おもしろいです!」
「ですから一言、私にも言わせてください!」
「言いたくて言いたくて、たまらないんです!」

という前向き、積極的な意思表示をしているのです。

日本人にとっては単なる「出しゃばり」で、話し手への敬意のかけらも示さない無礼なヤツにしか見えないヨルダン人ですが、

ヨルダン人にとっては、出しゃばるのは無礼な行為などではなく、むしろ相手への敬意さえ示す重要な行為です。

ですからヨルダン人は相手にも「前のめり」な姿勢を期待するのですが、頻繁に間(ま)を空ける日本人を見て、

「なに、この人達のノリの悪さは?」
「私の話、おもしろくないのかな?」
「この人達、関心がないんだな」

などというあらぬ解釈をするのです。

オンライン会議終了後の両者のつぶやき

日本側のつぶやき:

はあ、疲れた~、
それにしてもヨルダン側はヒドイね、
いつも自分たちばかりしゃべっちゃってさ!
こっちの話、ちゃんと聞いてないよね・・・?

はびーびさん(私)、ちゃんと今日こっちが言いたかったこと、もう一度ヨルダン側に言っておいてちょうだい!ああ、チョー疲れた!

ヨルダン側のつぶやき:

はあ、疲れた~、
今日の会議、日本側はヤル気なかったよね?
こっちの話に全然関心なさそうだもんね。
話が全然弾まんし、いつもホント疲れるわ!

はびーびさん(私)、日本側はホントにこっちと仕事する気あんの?こっちが話すと、すっごい嫌そうな顔するし。それに日本側の人は話が少ないから、何を考えてるのかわからないよね。。。
ああ、チョー疲れた!

この困った状況への対処法は、また今度考えてみたいと思います。

(参考文献)

Fons Trompenaars, Charles Hampden-Turnar (2012) Riding the Waves of Culture: Understanding Diversity in Global Business