最近、よく目にする言葉、
「グローバル・スタンダード」。
世界でビジネスをしていく上で必要なルールや
製品などの規格、規制、物流の法制度といった
文脈で「グローバル・スタンダード」と言わ
れればわかります。
しかしながら、
海外での働き方、外国人との仕事の進め方と
いう文脈で「グローバル・スタンダード」と
言われると、私はにわかに違和感を覚えます。
「グローバル・スタンダード」というと、
「世界で通用する、標準的なやり方」
という意味になりますが、
「グローバル・スタンダード」とか
「世界に通用する働き方」を謳った話を
聞いていると、
多国籍企業や外資系企業における欧米人との
仕事の仕方を考察したものが多いように思い
ます。
この場合、
「グローバル・スタンダード」や
「世界に通用する」
という言葉は正確ではなく、
あくまで
「欧米人との仕事におけるスタンダード」
「欧米人主体の外資・多国籍企業で通用する
仕事の仕方」
とするのが適当であって、
「グローバル・スタンダード」
は言い過ぎ、不適切だと感じます。
また、「欧米人」とひとまとめにする言葉は
とても便利ではありますが、
「欧米人」といっても幅があります。
北欧、東欧、南欧という地域差に加え、
アメリカやイギリスなどのアングロサクソン系、
ドイツなどのゲルマン系の人たちとの間でも
仕事の仕方、コミュニケーション作法は違います。
欧米人のうち、一体どの人たちのことを想定して
「スタンダード」を語っているのかが明らかで
ない限り、その「スタンダード」に説得力を感じ
ません。
このように、
「外資系企業」「多国籍企業」「欧米人」と
ひとくくりにされたものを論じただけで、それが
「グローバル・スタンダード」だというのは暴論
でしょう。
私は中東のヨルダンにいますが、
「外資系スタンダード」
「多国籍企業スタンダード」
「欧米スタンダード」を
「グローバル・スタンダード」としてヨルダン
で適用しても仕事になりません。
あるいは、その「グローバル・スタンダード」を
「これが世界でのスタンダード、常識だから」と
相手に押し付けたところで、相手からの反発を
くらうだけです。
例えば、
ヨルダンではアポの時間はあくまで目安であり、
アポに遅れたからといって詫びる必要もなく、
アポに遅れた相手を咎めることもありません。
「遅刻はグローバル・スタンダードに反する」
とばかりに遅れた相手を責めたところで、
「なんだ?お前は神か?(Are you God?)」
と本気で睨まれるか、
「まあまあ、神を責めるな (Don’t blame God)」
とたしなめられるだけです。
さすがに私も慣れましたので、今では遅刻した
相手には何も言いませんが、ヨルダン赴任当初、
何度上のように言われたことかわかりません。
その他、「グローバル・スタンダード」を謳った
ある著作には、
・要点を簡潔に述べること
・結論を先に、理由や背景は後の順番で話すこと
というのもあります。
しかし、ヨルダンで結論を先に、簡潔に述べた
ところで相手は戸惑うか、不審に思われるだけ
です。
結論を先に言うと
「なんだ、唐突に!?」となりますし、
簡潔に説明すると
「は?それだけ?」となります。
ヨルダンでは、理路整然と、簡潔に說明できた
とドヤ顔で安心している場合ではありません。
簡潔な說明しかしない人間は、なにか情報を
他に隠しているのではないかと疑われますし、
抑揚のない話には、何がポイントなのか、何が
重要なのかが相手に伝わりません。
何より、中東には「言葉少ない者は教養がない者」
という言い回しがあります。
簡潔な話しかできない者は、アンポンタンである
ことを自ら告白しているのと同じなのです。
他にも、ちまたに溢れている「グローバル・
スタンダード」を信望しすぎなのか、単刀直入
に思ったことを述べて相手の顰蹙をかったり、
怒りを招いて玉砕している日本人をこれまで
たくさん見てきました。
エリン・メイヤー著
『異文化理解力(英知出版)』
にもありますが、相手にどうネガティブなこと
を伝えるか、どのようなネガティブ発言なら
許容されるかは欧米人の間でも認識に差があり
ます。
私自身も経験がありますが、ドイツの方々は、
もう涙が出てしまいそうになるぐらいケチョン
ケチョンにこちらのことを口撃してきます
(相手に悪気はありません)。
一方、アメリカ人は意外にもネガティブなこと
を伝えるときは「やさしい」ものです。
10のうち、8ぐらいポジティブな話をして、
残りの2のネガティブな部分も、できるだけ
ポジティブな表現をつかってやんわりと示す
ようなイメージでしょうか。
これらの例からも明らかなとおり、
「グローバル・スタンダードなんか、ない」
のです。
もし、「スタンダード」と呼ばれるものがある
とするなら、それはある特定の地域や、特定の
企業、組織内でのみ通用するものにすぎません。
外資系企業、多国籍企業での欧米人との仕事の
進め方、コミュニケーションの仕方は、あくまで
もそれら職場環境におけるスタンダードであって、
「グローバル・スタンダード」ではないのです。
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