グローバルチームと心理的安全性:「桃」と「メロン」

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心理的安全性と聞くと、「怒らないから正直に言いなさい」と親に言われた子供のときのことを僕は思い浮かべてしまいます。

ひとつ鮮明に覚えているのが小学生のときのことで、母に買い物を頼まれてスーパーに出かけ、そのお釣りをスーパーの裏にあったゲームセンターで使っちゃったときのことです。

「僕はポケットにちゃんとお釣りを入れた、きっと帰りに乗ったブランコか滑り台で落としたんだ」

と迫真の演技をした記憶がありますが、

母に言われた「怒らないから正直に言いなさい」の言葉に、僕は「心理的安全性」を微塵も感じませんでした。

普段の家族とのやり取りの経験上、本当のことを言ったらきっと怒られると心の奥底で思っていたからです。

 

チーム作りでよく議論になる「心理的安全性」の必要性ですが、僕は相手によって作り方を変えない限り、そこに

「怒らないから正直に言いなさい」

という、相手に妙なプレッシャーを感じさせてしまうのではないかと思っています。

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例えば異文化理解の視点のひとつとして

「どのように人間関係を築くか」

というものがあり、そこでの喩えとして出てくるのが

「桃型」と「メロン型」(*)

です。

 

「桃」と「メロン」の違いは外皮の性質です。

「桃」は皮が柔らかいですが「メロン」の皮は硬いですよね。

 

これを人に当てはめると

「桃型」の人は「皮が柔らかい」

つまり社交的で、知らない人に対しても最初から笑顔で接したり、仕事でもわりとオープンに話をしてくれるところが特徴的です。

雑談や個人的な話から関係性をつくり、オープンなコミュニケーションを「信頼」のサインとして受け取る傾向があります。

 

一方「メロン型」は「皮が硬い」

つまり知らない人に対して警戒心が強く、なかなか思っていることを表現しません。

 

しかし一旦外側の皮がとれる、つまり相手と信頼関係ができると、相手に対してとことんオープンになります。

「メロン型」の代表格として、日本を含むアジアの一部やドイツ、フランス、ロシアなどが挙げられることがあります。

僕の経験では中東も「メロン型」が多い印象があり、「メロン型」はお互いの信頼関係ができるまでとにかく時間がかかります。

 

こうして考えると、グローバル環境ではメンバーの構成や状況によって「心理的に安全な環境」を作るアプローチを変える必要があるわけです。

「メロン型」が多い環境では

どれだけこちらが「心理的に安全な」雰囲気作り、働きかけをしても、お互いの信頼関係ができていない状況では効果が限定的です。

おまけに「メロン型」が多い文化圏では「階層性」を重視する場面も多く、年配の人や目上の人がいると一層外側の皮を厚くし、思っていることを引っ込めてしまいます。

 

逆に「桃型」のチームは、僕も気持ちが楽なことが多いです。

ミーティングをしても必ず誰かが口火を切ってくれますし、正直に思っていることを言ってくれるケースが多いからです。

 

頭が痛いのは「桃とメロンがごちゃ混ぜ」の時です。

「心理的に安全な環境」の定義が違うので、そこでのお互いの行為や態度が相手に不信感を抱かせてしまうからです。

 

「桃型」のメンバーは皮の硬い「メロン型」に対し

・意見を言わない=やる気がない

・何を考えているかわからない

と不信感を持ちますし、

 

逆に「メロン型」のメンバーは「桃型」のメンバーに対し

・自己中

・無礼者

と冷めた目で相手を見ています。

 

僕自身も本来は「バリカタのメロン型」です。

だから「何でも言ってください」「失敗を恐れず意見を言ってください」と言われても

相手や周囲とある程度の信頼関係がない限り、僕は心理的安全性を感じることはありません

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こうして考えると「心理的安全性」はチームに与えるものではなく、それぞれのメンバーが「感じるもの」だということに思い至ります。

 

メンバーがそれを感じられる状態というのは、そこに至るプロセスが「適切だった」ことによるものです。

そしてプロセスが「適切だった」かどうかは人によって受け止め方が違う。

だからグローバルな環境においても、何が相手にとって「適切な」プロセスなのかを知ることが大事なのではないかと思います。

 

「心理的に安全な環境」を作るために僕がやっていることとして、やはり「メロン型」の相手に気を遣います。

いくら正直に言っていいと言っても、僕との信頼関係ができていない段階ではそれをしたがらない人たちです。

だから会議があっても、その場で話してもらうのではなく紙に無記名で意見を書いてもらうこともありますし

信頼関係ができている他の人に相手の真意を聞きに行ってもらうこともあります。

 

結局、相手が「桃」でも「メロン」でも、メンバーひとりひとりと向き合うことを外してはいけないんでしょうね。

「桃型」は皮が柔らかくオープンだと書きましたが、桃にもその中心には硬くて大きな種があります。

「桃型」は付き合いやすいですが、核心の部分、つまり種の部分まで知るには相手と丁寧に信頼関係を作っていくしかないと思うのです。

 

(*)「桃型」と「メロン型」:

こんな区分けを提唱したのはFons Trompenaarsという異文化研究の学者で、彼は「桃」と「ココナッツ」を使っています。

でもココナッツは日本人に馴染みが薄いので、僕は「桃型」「メロン型」を使っています。どちらも僕の好物ですし。