ヤル気のある態度とは?

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仕事で「ヤル気がある」「有能だ」と相手を評価するのは
相手のどういう状態のことを指すのでしょうか。

・職場でおしゃべりばかりしている
・会議で人の話を聞いていない
・朝は遅刻ばかりなのに終業時間は厳守
・メールの返信をしない
・勝手に物事をすすめようとする、等々

僕は新興国や途上国での仕事に関わってきましたが
上のような態度や仕事の仕方を目にすることが多く、
それが僕にとってはものすごいストレスでした。

なぜなら僕のモノサシでは
彼らの仕事ぶりは

「ヤル気がない人たち」
「評価するに値しない人たち」

ということになるからです。

現地の同僚やスタッフがそんな状態では
こちらが思い通りに仕事を進められない。

だからイラ立ち、うんざりし、失望だけが
つのっていくのです。

そんな彼らの仕事態度、仕事のスタイルを
「教育し」改めさせようとしたことがあります。

おしゃべりに興じるスタッフにツカツカ近寄り
用がないなら自分のデスクに戻るように言う・・・

会議中はメモを取りながら人の話をよく聞くように言う・・・

遅刻や早退した分は
給料から差し引くゾと警告する・・・

メールを見たらすぐ返信するのが「当たり前」
「相手への礼儀」だとお説教する・・・

同僚や上司と常に報連相(報告・連絡・相談)
しないとチームがバラバラになるとお説教する・・・

思い付きで判断するのではなく
いろんな人の意見や情報を聞き、
あらゆるリスクや可能性を検証した上で
行動しなければならないと説く・・・



このように、かつての僕は

「この人たちは怠慢でダメだ」
「みっちり教育しなければ」

と意気込んでいたことがあるのです。

しかしながら現地のスタッフたちから
激しい反発を受けてしまいました。

おしゃべりが止まらない理由

相手の仕事のスキルや実績、経験、能力よりも
「相手とどれだけ近い関係か」がモノをいう文化
があります。

相手との距離が近ければ近いほど
無理をお願いしても融通をきかせてくれたり、
協力や連携が密になり仕事がみるみるうちに
進むのです。

だから職場でお茶しながら雑談したり
仕事と全く関係のない話で盛り上がるのは
仕事を効果的、効率的に進めるためにも必須で、
彼らにとっては「無駄なお遊び」ではないのです。

 

会議でメモを取らない理由

会議中にメモを取らない人たちは
相手の話を、相手の目を見ながらじっと聞き、
何か思うことがあればすぐに質問したり
自分の意見を発言します。

議論に入ってこない者、発言がない者は

「何も考えていない者」
「チームに貢献しない者」
「ただの下っぱ」として

次からミーティングに呼んでもらえなくなります。

そこでは「聞き上手」は何の意味も持ちませんので
おとなしくメモなんか取っている暇はないのです。

 

仕事で遅刻を気にしない理由

仕事よりも「家庭が最優先」と公言する人たちが
世界にはたくさんいます。

子供の毎日の学校への送り迎え、
親族や友達の誕生パーティーの準備の方が
仕事よりもはるかに大事。

それで朝の遅刻や早退は日常茶飯事です。

 

また新興国や途上国では交通事情の悪さが
遅刻やアポへの遅れに拍車をかけます。

雨が少し降るだけで道路が冠水したり
信号が停電してそこから渋滞になるなど、
職場や出先への到着時間が読めません。

だからアポに遅れても咎める人がおらず
信頼関係にヒビが入ることもありません。

数分の遅刻をしたスタッフに厳しく接することで
「オカベは現地事情を全く理解していない」と
ここでも激しい反発を受けました。

 

メールの返信が来ない理由

メールに返信が来ないのにも理由があります。

そもそも長いメールを送るぐらい話が重要なら

「なぜ電話してこないのか?」
「なぜ直接会って話しようとしないのか?」と

メールを送って済ませようとしている相手こそが
「ヤル気がない」という見方をするのです。

だからメールで用件を伝えたからと安心していると
いつまで経っても返信が来ずに痛い目に遭います。

 

思慮深い行動が見られない理由

海外で仕事していて感じるのは
自分で考えて行動するスタッフや、

中身はメチャクチャでもさっさと意思決定する
マネージャーが評価されるところが案外多いな
ということです。

間違った判断をしないよう
あとで周囲にミスを指摘されないよう

「あの人にも相談しなければ」
「あちらの部署の意向も確認しなければ」
「上司にお伺いを立てなければ」

などと僕はやっていたわけですが、

「頼りないヤツ」
「使えないヤツ」
「無能」と

現地のスタッフにぞんざいな扱いをうけたり
見下されていたことがあります。

スタッフが勝手なことをしでかさないよう
逐一スタッフに

「いま何がどうなっているのか」

報連相(報告・連絡・相談)するよう
求めたことがありました。

しかし、うんざりした相手の顔に気づくのに
時間はかかりませんでした。


一人前のプロフェッショナルとして
自分で状況を判断し行動する。

逐一上司にお伺いを立てること自体が
「未熟者の証」として評価されないところも
あるということです。

このような現地事情があることを知るにつれ、
かつての僕は彼らを「教育」することによって
仕事の質を高めるどころか、

見た目の彼らの行動だけで彼らに「ダメ出し」し
こちらの価値観を押し付けることで
彼らのヤル気を大いになくさせてしまっていたのです。



でもだからと言って
僕が自分のやり方を100パーセント放棄し
彼らのやりたいように100パーセント
合わせるというものではありません。

僕にもできること、できないこと、
彼らのやり方を容認し応援したくても
組織の立場やルール上できないこともあります。

だから「楽しくやろうゼ」なんて気安く言いません。

ただ、言葉や考え方が違う間柄であっても
できるだけ気持ちよく仕事したいだけです。

いいチームを作りたい、お互いがいい仕事が
できる環境を作りたいだけなのです。