同じ職場に個人主義・集団主義がいるとどうなるか

グローバル社会では様々な価値観、様々な仕事のやり方、考え方を持つ人と一緒に働くことが多くなります。

この投稿では

「個人主義的な価値観をもつ人」
「集団主義的な価値観をもつ人」

が同じ職場にいる場合どんなことが起こるのか

・コミュニケーションの仕方の違い
・同僚やパートナーとの関係

の観点から考察します。

コミュニケーションの仕方の違い

直接的コミュニケーション vs. 間接的コミュニケーション

個人主義:直接的コミュニケーション

「個人主義」とは「私は私」「あなたはあなた」というように、「もともと個々の間で違いがある」ということが大前提になっています。

だから違う者同士のコミュニケーションで、お互いに誤解がないよう意思疎通を図る上では、思っていることを端的に、ストレートな言葉で表現する必要があるという考えになるわけです。

そして相手が口から発した言葉をそのまま言葉の額面通りに解釈します。

たとえば相手が「Yes」と言えば、相手の意図は「Yes」だと認識するのです。

集団主義:間接的コミュニケーション

一方、「集団主義」がもっとも大事にするのが「相手との円滑な、調和的な人間関係」です。

意見や立場の違いがある場合、それを面と向かって言葉で表現してしまうと相手と対立してしまいます。

だから相手との関係で溝を作ってしまわないよう、相手が気分を害しないよう、曖昧な表現を使ったりボディランゲージや顔の表情、声のトーンを使いながら「相手に察してもらうこと」を期待するようなコミュニケーションを行います。

そのため「口から言っていること」と「本音・意図」が異なることも多くなるわけです。

集団主義のコミュニケーションでは相手が「Yes」だと口では言っていても、本音の部分は「No」のこともあり得ます。それを聞き手の方は文脈やその場の空気、相手の態度などから察していかなければなりません。

以下の図は個人主義と集団主義のそれぞれのコミュニケーションの特徴を整理したものです。

 

【個人主義】
ロー・コンテクスト
直接的コミュニケーション
(「空気」に左右されない文化)
・言葉によるやり取りを重視
・直接的・ストレートな表現を使う
・意味を強調する言葉を多用
・聞き手は話し手の言ったことを額面通り受け取る
・意見の相違は議論して調整する
・会話の繰り返し、重複を厭わない

【集団主義】
ハイ・コンテクスト
間接的コミュニケーション
(「空気」を読む文化)
・ボディランゲージ、顔の表情などから真意を伝える
・あいまい表現、ほのめかし、沈黙も多用
・断定を避ける表現を多用
・聞き手が話し手の意図を汲み取る
・自己主張、議論、言い争いを避ける
・「わかりきったこと」を口にしない

 

個人主義・集団主義の人が同じ職場にいると・・・

集団主義の間接的表現・あいまいなコミュニケーションが生み出す誤解

個人主義の人にとって、集団主義の間接的な表現は理解しづらく、誤解を生みやすいものです。

たとえば上司の「是非、検討させてもらう」という返答は、集団主義の文脈では婉曲な「No」を意味することがあります。

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しかし言葉を額面通りに受け取る個人主義の部下は前向きに解釈し、期待を膨らませてしまいます。

そして後になって却下だと分かると、上司を「不誠実な人間だ」などと評価してしまうのです。

「消極的」vs.「攻撃的」な相手に対する嫌悪感

会議では、個人主義の社員は積極的に発言する一方、集団主義の社員は相手への配慮から発言を控えがちです。

個人主義の側は沈黙を「意見がない」「非協力的」と否定的に捉えますが、集団主義の側は積極的な発言を「攻撃的」「無礼」と感じます。

 

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互いの行動は価値観の違いによるものであるにもかかわらず、相手の姿勢そのものを否定的に評価してしまうのです。

報連相に対する考え方の違い

集団主義では報連相を通じた密な情報共有が重視され、上司もそれによって部下の状況を把握します。

一方、個人主義では自律的に仕事を進めることが当然とされ、頻繁な相談は不要と考えられがちです。

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その結果、集団主義からは「個人プレー」、個人主義からは「非効率・能力不足」と互いにネガティブな評価が生まれてしまいます。

評価についての考え方・モチベーションのありかの違い

評価・モチベーションについての考え方の違い

個人主義:個人のパフォーマンス・自発性がカギ

個人主義社会では、仕事の評価は各個人の目標達成度や業績に基づいて行われます。職務記述書に定められた役割をどの程度果たしたかが評価の中心であり、業務管理や報酬、モチベーションもすべて個人単位で扱われます。

そのため、会社全体の業績が悪くても、個人として高い成果を上げた社員は契約に基づいて正当に評価・報酬されるべきだと考えられます。周囲の状況よりも、あくまで「個人の実力」が重視されるのが特徴です。

また個人主義社会では自ら課題を見つけ、自分の力で結果を出すことが「当然」と考えられます。問題が起きても、まずは自分で解決しようとする姿勢がプロフェッショナルの条件とされます。

指示や助言を求めることはあっても、常に他人に頼る態度は能力不足と見なされがちです。

集団主義:チーム全体のパフォーマンスを重視

集団主義社会では、個人よりもチーム全体のパフォーマンスが重視されます。そのため報連相などのコミュニケーションを通じて上司が進捗や方向性を把握し、チーム全体を調整します。

個々の役割以上に、互いに助け合い、チームにどう貢献しているかが重要視されます。マネージャーも個人の成果だけでなく、必要に応じて周囲に支援を促しながらチーム全体の成果向上を図るのが特徴です。

個人主義・集団主義の人が同じ職場にいると・・・

評価基準の違いによる不満

個人主義では、各人が自らのパフォーマンスを最大化することでチームに貢献すると考え、評価も職務記述書や目標に基づいた「個人の成果」が中心になります。

上司に求められるのも、個人の成果に対する明確なフィードバックです。

 

一方、集団主義では成果に加えて、協調性や他者への配慮といったチーム内での振る舞いも評価対象となります。そのため、報連相や周囲へのサポートなど、数値化しにくいプロセスが重視されることがあります。

この評価基準の違いは、個人主義の人に戸惑いやモチベーション低下を引き起こすことがあります。

モチベーションの低下・人材の流出

個人主義のモチベーションは、昇進・昇給や重要な仕事への抜擢など、個人にとっての明確なメリットに基づきます。

転職も前提とされるため、現在の成果が将来のキャリア価値につながるかどうかが重要です。そのため、個人的な利得が見えないと意欲やパフォーマンスは下がりがちになります。

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一方、集団主義では個人の報酬に加え、職場の雰囲気や人間関係、組織の一員として受け入れられている感覚もモチベーションに影響します。

この違いから、日本企業では個人主義の社員に十分な「個人メリット」を示せず、人材流出につながるケースも少なくありません。

信頼関係の築き方の違い

仕事場における人間関係のあり方の違い

個人主義:「ドライ」「認知的信頼」重視

個人主義社会のビジネス関係は、相互の利益を前提としたドライなものです。評価されるのは人柄ではなく、スキルや経験、成果であり、会社に必要とされなくなれば関係は解消されます。

配置換えが行われる場合も、あくまで能力が求められるからであり、情緒的な配慮が理由になることはほとんどありません。

さらに個人主義社会では、信頼は相手の実績や能力、パフォーマンスによって築かれます。人脈や長年の付き合いは重視されず、ビジネスと私生活も明確に分けられます。

そのため契約書を通じて、考え方や責任範囲、対応方法を言語化し合意することが信頼の基盤となります。違いを前提に、明確な合意があって初めて信頼が成立すると考えられています。

集団主義:人間関係・人との「つながり」重視

集団主義社会では、既存の人間関係や身近なつながりが重視され、新しい関係は時間をかけて築かれます。能力や実績よりも、「ウチとソト」といった感情的な共感や長年の付き合いが信頼の基準になることも少なくありません。

仕事と私生活が重なり合うことも多く、上司は家長的に部下を支え、部下は忠誠を尽くす関係が形成されます。契約書よりも、人間関係に基づく柔軟な対応が優先されます。

個人主義・集団主義の人が同じ職場にいると・・・

信頼関係の築き方の相違による違和感・不信感の増長

集団主義の職場で働く個人主義の社員にとって、業務外の付き合いを強いられることは負担になりがちです。

一方、集団主義の側は、仕事だけでは相手の人となりが見えず、関係構築に戸惑います。

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また、利害がなくなれば関係が終わるという個人主義的な割り切りは、集団主義の人にとって理解しがたく、双方に違和感を生みやすいのです。

「ウチとソト」による疎外感・孤独感

集団主義では「ウチ」と「ソト」で態度が変わり、新しく入った人が馴染みにくいことがあります。

日本で働く外国人労働者が、能力があっても「ソト」として扱われ孤立するケースはその典型です。

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逆に、集団主義の人が個人主義の環境に入ると、仲間意識が弱く受け入れられていないと感じ、孤独感を抱くこともあります。こうした相互のズレが適応の難しさを生みます。

 

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